
2025年5月24日、四天王寺大学あべのハルカスサテライトキャンパスにて日本実践英語音声学会 (PEPSJ)関西支部の第7回研究大会が開催されました。本大会では2本の研究発表と長瀬慶來先生(山梨大学名誉教授)による基調講演が行われました。

1つ目の研究発表は上野舞斗氏(四天王寺大学)による「AI音声は『態度』を伝えられるか-トーンにみるニューラルTTSの可能性と限界-」という題目でした。ChatGPT4oに1つの英文を提示し、3つの条件下においてその英文の読まれ方(イントネーション)についてのどのような知識が提示され、そしてどのような音声産出となるのかについての考察が加えられ、文脈に沿った音声産出にはまだ課題が残るという指摘がなされました。2つ目の研究発表は、谷光生氏(京都女子大学)による「サリンジャー文学におけるイタリクスとイントネーションの関係について-短編小説“A Perfect Day for Bananafish”を具体例に-」でした。サリンジャー文学におけるイタリクスの用法にはイントネーションが深くかかわっており、イタリクスの部分が、語の一部(音節)、句、節になるほど感情介入の度合いが高まっているという鋭い考察が行われました。

研究発表につづいて長瀬慶來先生による基調講演が行われました。「ロンドン学派音声学研究とパストゥールの4象限-DJ、P. Ladefoged、そしてH.E. Palmer-」という題でDonald Stokesによるパストゥールの4象限の理論的枠組みを用い、ロンドン学派に属する代表的な音声学研究者(Daniel Jones, Peter Ladefoged, Harold Palmer)を第1象限から第4象限(第3象限は該当者がいないため分析対等とはしていません)への位置づけが行われました。各音声学者の研究内容などを基にすると、第1象限(実用志向型基礎研究)にはDaniel Jones、第2象限(純粋基礎研究)にはPeter Ladefoged、第4象限(純粋実用研究)にはHarold Palmerに振り分けられるという結果になりました。

基調講演の中ではDaniel Jonesにより考案された基本母音についても触れられました。Jones自身は基本母音の配置は「音響学的に等距離な位置にある」としていましたが、その後、Jonesから直接指導を受けたD.B. FryやA.C. Gimsonなどの基本母音がPeter Ladefogedにより音響分析にかけられた結果、Ladefogedが編集に加わったHandbook of the International Phonetic Associationでは「聴覚的に等距離に」という文言に変更されたという点についても紹介されました。本基調講演ではロンドン学派に属する音声学者の歴史を知ると同時に、長瀬慶來先生の膨大なる知識を基にしたお話、そしてロンドン大学に留学をされていた頃の体験談も交えながらの講演となりました。
最後になりますが、研究大会当日は天気がすぐれず雨模様ではありましたが、会場にまで足を運んでくださった皆様には深く御礼を申し上げます。また、当学会に会場をお貸ししていただき運営に多大なご協力をいただきました四天王寺大学にも、心より御礼申し上げます。



















